[Evaluation of anti-toxic shock syndrome toxin-1 (TSST-1) antibody in severely burned patients].

序 文 広範囲熱傷患者は,皮 膚常在菌である黄色ブ ド ウ球菌が繁殖 しやす く,近 年のメチシ リン耐性株 の流行に伴い,創 感染ひいては敗血症に陥 り治療 に難渋する.特 に当施設においては,黄 色ブ ドウ 球菌の94%が メチシ リン耐性で さらにその うち 96%がTSST-1産 生株であ り1),それが感染症の重 篤化になんらかの影響を及ぼしていることが想定 される.そ こで研究の第一段階として,広 範囲熱 傷患者血清中のTSST-1に 対す る抗体 である抗 TSST-1抗 体価を測定 し,臨 床的意義について検 討した. 材料 と方法 対象は気道内,創 部等よりマンニット分解,食 塩耐性,コ アグラーゼ陽性の基準にて同定 した Staphylococcusaureusが 分離検出 された広範囲 熱傷患者16例 である(平 均年齢44.8±17.4歳,平 均熱傷面積48.9±13.8%).試 料は対象症例よ り受 傷早期から一週毎に血清を採取 し,-70°C にて保 存 した.抗 体価の測定はELISA法 を用いた.す な わち,精 製 したTSST-1を マイクロウエルに固相 化 して,血 清中の抗TSST-1抗 体を捉え,さ らにビ オチンにて標識 したヤギのポリクローナル抗 ヒト IgGFc抗 体にて挟み込み発色させ,450nmの 吸光 度にて測定しこれを抗体価 とした.有 意差検定は Wilcoxonの 符号付順位和検定にて行い,有 意水 準を0.01未 満 とした.以 上の方法にて経 日的な抗 体価の変動を臨床情報 とともに評価した. 成 績 抗体価の変動は,入 院時か ら徐 々に上昇 し,入 院 日数の増加に伴い抗体価が上昇するのが認めら れた(Fig.1).ま た分離検 出前後においては,分 離検 出前0.234±0.160か ら,分 離検 出後0.406± 0.259と な り,両 群間に有意差が認め られた(p< 0.01).な お,抗 体価 と臨床経過 との間に一定の関 係は認め られず,こ れ らの症例で古典的なTSS