Adaptive Deformation Simulation of Inhomogeneous Elastic Objects

ゼリーのような柔らかいもの(もしくは弾性体)の物理 ベースな変形シミュレーションは, 動画やテレビゲームなど の分野において重要である. これまで, コンピューターグラ フィックスの分野において, 弾性体の変形に関する非常に多 くの研究がなされてきた. 質量バネモデルや粒子ベースモ デル [19, 11, 1]は, テレビゲームのようなインタラクティブ なアプリケーションに用いられ, より正確な, すなわち連続 体力学に基づいた FEM(Finite Element Method, 有限要素 法)ベースのシミュレーション手法は, 主に正確さが要求さ れる動画に用いられている. FEM ベースのモデルは, 計算 コストが高いことが知られており, アダプティブ分割法など の多重解像度手法が提案されている [4, 8]. 一般的に多重解像度のアプローチを用いる FEM ベース の手法では, 入力の弾性体を階層構造をもった複数の要素 (本手法では四面体)に分割する. すなわち, 物体を構成する 複数の要素は多段階解像度 (レベル) からなっており, 木構 造のような親子関係が作られる. 典型的な多重解像度手法で は, 親要素は子要素の弾性行列を共有しており, 物体は均質 であるか均質な部分毎に要素を分けておく必要がある. さら に, 典型的なアダプティブな手法では, 四面体分割は変形中 に動的に行われる. これらの手法を直接非均質な物体の変 形に適用しようとすると, 一つの親に属す子要素の弾性行列 (硬さを表す値)が異なる場合には, 各レベルにおける弾性 行列を変形中に動的に計算するのは難しいことから, 適用は 困難であると考えられる. 本稿では, 我々は与えられた硬さの関数に基づいてボトム アップサンプリングにより, 全てのレベルにおけるすべての 要素の弾性行列を計算する方法を提案する. 提案手法を用い ることで, 隣接する子要素の弾性行列が連続的に異なるよう な場合も扱うことが可能となる. さらに分割と弾性行列の計 算を前処理で行い, 変形中に動的にアダプティブにレベルを 変更することで, ランタイムでの計算コストを減らすことが 可能である. 我々のアプローチはオフラインで行う前処理とランタイ ムに行う処理の 2 つからなる. 前処理において, 入力の弾 性体はシミュレーションが安定するよう, 分割された四面体 のクオリティがよくなるように, 最初に再帰的に複数の四面 体に分割する. 次に, 硬さを与える関数を元にサンプリング アプローチを用いて, 最も細かいレベルから順に最も粗いレ ベルにわたる全てのレベル四面体要素の弾性行列を計算す る. ボトムアップな処理により, 我々は全てのレベルにおけ るすべての要素の弾性行列を得ることができる. ランタイム 時は, ユーザが与えた誤差上限と要素の歪みに応じてシミュ レーション要素はアダプティブに選択される. 提案手法を用 いることにより, 均質な変形と同じように非均質な変形をア ダプティブに行うことができる. 本稿では粗いレベルの弾性行列のみを計算している. 粘性 行列 (エネルギー散逸に寄与) や塑性 (一定以上の外力が加 わった時に元の形状に戻らなくなる性質)は考慮しておらず 今後の課題である.