この随想は,傘寿を迎える年齢まで大学教員として奉職した一人の女性科学者の四方山話である。大学職員の職を得た過程から始まり,優秀な指導者,科学者に出会えたことが筆者の長期にわたる研究・教育活動の原動力となった経緯を綴っている。自然科学の基礎研究を基盤として,企業研究,応用研究へと転換過程には環境の変化も大いに影響した。そして,現世代の喫緊の課題であるエネルギー,環境問題,さらに永遠の課題である治療研究にも携わった。日本政府の科学技術政策や海外での留学生の研究・教育に関与することにより,グローバル時代に対応した広い視野での科学的見識を深めた。しかしながら,COVID-19の蔓延や他国への侵攻等これまでの人生で経験しなかった世界規模の課題に対しては,一個人としてのなすべき限界を感じている。世界からは後れを取ってはいるが,この十年で女性科学者の環境は大きく変わった。この流れは今後も加速するは...