我が国における国際化の進展に伴い, 脳損傷後遺症で言語障害を呈する多言語使用者も増加する傾向にあり, その回復に着目されるようになっている。このような背景が大きなきっかけとなり, 日本高次脳機能障害学会学術総会においてシンポジウム「多言語話者の失語症」が企画されたのだろうと思われる。 3 種類の言語 (英語, スペイン語, 日本語) を習得済みの筆者 (これ以降, 私と呼ぶことにする) は確かに右半球損傷後に言語障害を呈してはいたが, 本シンポジストとして相応しくないと思われる。その理由は, ①習得した言語のパフォーマンスはいずれも日常会話程度で多言語使用者というレベルに達していない, ②私は生来の強い左利きであり, 右半球損傷由来の言語障害と左半球損傷由来の失語症とみなしてよいか疑問である, ③バイリンガル失語症の回復に関与する極めて多数の要因のうちどれか 1 つを明確に関与因子と...